映画『殿、利息でござる!』、おもしろかったなあ。
キャストとポスターから、勝手にクドカン系のギャグコメディだと
思い込んでいたんだけど、ぜんぜん違った。
原作は、史実・史料調査をもとに、江戸時代の無名の百姓や武士、
町人たちの「公」の姿を描いた実話、「無私の日本人」という作品の
なかの一遍「穀田屋十三郎」。
仙台藩吉岡宿のある集落は、武士に締め付けられて貧しい暮らしを
強いられ、食うに困って夜逃げする者があとを絶たない。
人が減れば、残された人々はもっと生活が苦しくなる。
そこで、造り酒屋の穀田屋十三郎を筆頭に、志を同じくした9人が、
窮地に陥った集落のために、一家離散の覚悟で私財を投げ打って、
千両(3億円)もの大金を作り、これを財政難の藩に貸し付けて、
利子をとろうと考える。
その利子でまずは集落を豊かにして、人の流出を防ぎ、そのうえで、
商売を頑張ろう、と。
この9人が、最初から全員がスーパー善人として足ぶみが揃っている
わけではないところが「そりゃそうなるよなあ」「こういう人、いるいる」と
思えておもしろかったし、笑えるシーンももちろん多かった。
何度も意思を確認し合い、集落のためという「公」へまとまっていく様子
には感動もあった。
特に、お金を出し合って、集落を救おうという9人が、
自分たちの業績を誇ることを禁じるために掲げた『つつしみの掟』には
もうただただ尊敬の念を抱くばかり。
穀田屋十三郎の子孫は、現在も宮城県で酒造メーカー「酒の穀田屋」
として店を続けているそうなのだけど、映画鑑賞後に聞いた話では、
原作者が取材のためにこの穀田屋を訪れても、当代の店主は、
「昔、先祖が偉いことをしたなどというてはならぬと言われてきたもの
ですから」
と話し、なにも語らなかったのだという。
ううううーん、立派すぎる。
原作には、ほか二篇の、無私の無名の日本人が描かれているらしい。
読んでみようっと。